汗をかく季節になると、人知れず悩みを抱える人が多くなる「多汗症」と「わきが」。
同じ“汗”に関する悩みとして、ひとくくりにされがちなこの2つですが、実は原因や症状は大きくことなります。
その違いや治療方法について詳しく見ていきましょう。
多汗症とわきがの違い
人間の体にある2つの汗腺
私たち人間の体には、「エクリン腺」と「アポクリン腺」の2つの汗腺があります。
エクリン腺から分泌される汗はさらさらとしているのが特徴の一方、アポクリン腺から分泌される汗は粘度が高く、べたべたとしています。
そして、この汗の質こそが、多汗症とわきがの違いを生み出しているのです。
多汗症の原因は「エクリン腺」
季節に関係なく汗が多くなる「多汗症」の原因は、エクリン腺にあります。
エクリン腺は全身にあり、前述のとおりさらさらとした汗が特徴です。
通常、汗をかくのは暑い時や運動をした時ですが、多汗症の人は温度や湿度、運動や食事に関係なく、全身のエクリン腺から大量の汗が分泌されてしまいます。
その原因は、汗の分泌をコントロールしている交感神経の乱れにあります。
生まれつきの体質や、ストレス、食生活の乱れ、ホルモンバランスなどにより交感神経の働きが乱れ、症状を引き起こすと考えられています。
エクリン腺の汗はさらさらとしていますが、大量に分泌されるとニオイが強くなる傾向があります。
わきがの原因は「アポクリン腺」
エクリン腺の異常が原因の多汗症に対し、「わきが」はアポクリン腺の異常が原因で引き起こされます。
アポクリン腺はわきの下、陰部、耳の穴、乳輪回りなど、限られた場所に集中して存在する汗腺です。
エクリン腺から分泌されるものとは異なり、粘度の高い汗が特徴です。
わきが特有のニオイは、アポクリン腺から分泌された汗と、エクリン腺から分泌された汗、さらに皮脂腺から分泌された油分が混ざりあい、それが雑菌によって分解されることで生まれます。
わきがには遺伝的な要素が強く、生まれつきアポクリン腺が多いとわきが体質になりやすいと言われています。
また、食生活の欧米化など、生活習慣も原因の1つと考えられています。
多汗症とわきがの見分け方
自分は「多汗症」なのか、それとも「わきが」なのか、いまいち分からないという人も少なくありません。
以下に、多汗症とわきが、それぞれの特徴を挙げてみました。
自分はどちらに当てはまるのか、症状に照らし合わせてチェックしてみてください。
多汗症の特徴
温度や湿度、運動、食事に関係なく、手や脇に常に湿り気を感じる
緊張する場面になると、全身や頭、手のひらなどに、より多くの汗をかく
肥満体型である
わきがの特徴
- 血縁者にわきがの人がいる
- 耳垢が湿っている
- 体毛が濃い
- 下着などにも独特のニオイがついている
多汗症やわきがの治療方法
わきがの治療方法
汗の分泌抑制
わきがは、アポクリン腺やエクリン腺から分泌される汗が原因で引き起こされます。
そのため、汗の分泌を抑制すればわきがの症状を緩和することができます。
アポクリン腺の汗の分泌を減らすには、剪徐法と呼ばれる外科的処置が必要です。
剪徐法とは、脇の下を1〜2箇所切開し、アポクリン腺を切り取る手術法です。
当院で行っている直視下反転剪除法は、脇の下を3cm前後切開して皮膚を反転させ、直視下でアポクリン腺とエクリン腺を確認しながら、1つ1つを丁寧に切除していきます。
この方法では、アポクリン腺を確実に除去できるというメリットがあります。
傷口が落ち着くまでガーゼ固定が必要などのデメリットも存在しますが、原因元除去の確実性から、多くの人に選ばれている施術です。
エクリン腺の汗の分泌を減らす方法としては、塩化アルミニウムの塗布、内服治療、ボトックス注射が挙げられます。
ボトックス注射では、脇の下や手のひら、足の裏など、ニオイが気になる箇所にボトックスを注射し、汗腺の働きを抑制して汗の分泌制御を行います。
とても簡単な治療方法で、5〜10分程度で終了します。
常在菌の殺菌・静菌
先にも述べたように、わきがは汗と脂が混ざりあったものを雑菌が分解することで発生します。
患部に抗生物質の外用薬を塗布し、常在菌を殺菌・静菌することで、ニオイを抑える効果が期待できます。
手術などに比べると、比較的手軽に行うことのできる方法です。
脇の下の除毛
脇の下の除毛も、わきが対策には有効です。
わきがの元になる常在菌は毛穴の毛根部分に多く繁殖しているため、レーザー脱毛で毛根ごと破壊し脇毛をなくせば、菌の繁殖を防いでニオイを軽減することが可能です。
ただし、男性の場合は脇毛を処理することに抵抗を感じる人も多いため、すべて除毛するのではなく、減毛で対応するなど、ケースバイケースで対応をする必要があります。
多汗症の治療方法
多汗症の治療内容は以下の通りです。
汗の分泌抑制
多汗症においても、わきがと同様に、汗の分泌抑制による治療は有効です。
一般的には、塩化アルミニウムの塗布やボトックス注射などの方法が行われています。
汗の分泌を抑制することで、多汗症に伴うさまざまな不快症状を緩和する効果が期待できます。
ドライオニック
アメリカ製の多汗症治療器具で、手のひら、脇、足の裏に電気を流すことで、一時的に汗の量を減らすことができます。
国内には取り扱い業者がいないため、使用するには個人輸入が必要です。
星状神経節ブロック、胸部交感神経ブロック
星状神経節ブロックは、軽度の多汗症や赤面症に対して行われる治療方法です。
頸部にある交感神経を局所麻酔で繰り返しブロックします。
胸部交感神経ブロックは、レントゲン透視化で肋骨の間から背骨の横まで針を入れ、高周波熱凝固法や濃度の高いアルコール注射で交感神経機能を麻痺させる治療方法です。
現在は、特殊なケースを除きあまり行われていません。
胸腔鏡下交感神経節遮断術
内視鏡を用い、発汗の指令を伝達する交感神経を外科的に遮断する治療方法です。
手術を行うことで、一生涯を通じて高い制汗効果を得ることができます。
多汗症治療の最終的な治療方法として位置づけられています。
多汗症・わきがを保険適用治療にするには
多汗症の治療を保険適用で受けるには、いくつかの条件を満たさなければなりません。
以下に、主な条件を挙げます。
- 国や厚生労働省による認可、法律を受けている
- 通っている病院やクリニックが医療保険を取り扱っている
- 美容目的ではない
- 重度の原発性多汗症と診断されている
これらの条件を満たす場合に限り、保険適用の治療を受けることができます。
上記のなかで最も重要な項目の1つが、重度の原発性多汗症と診断されているという点です。
原発性多汗症とは遺伝など先天的な体質による多汗症のことで、更年期やバセドウ病など後天的な要因によるものとは区別されます。
原発性多汗症であり、しかも重度であると医師が診断すれば、保険適用での治療が可能となります。
池袋サンシャイン美容外科では、多汗症に対して「ボトックス注射」と「直視下反転剪除法」の2種類の治療を行っています。
このうち、保険適用となるのは後者のみですのでご注意ください。
池袋サンシャイン美容外科のわきが治療
池袋サンシャイン美容外科では、わきがの治療を行っています。
わきがの治療にも、多汗症の治療と同様に、「ボトックス注射」と「直視下反転剪除法」が用いられます。
手術と聞くと心配に思う人も多いかもしれませんが、池袋サンシャイン美容外科では、経験豊富な医師による安全な施術が受けられるので安心です。
また、直視下反転剪除法を行うと毛根も一緒に取れるため、脇毛の脱毛効果も同時に期待できます。
ただし、脱毛を目的とした治療方法ではないので、その点はご注意ください。
わきがの治療においても、保険適用は後者のみとなっています。
汗やニオイの問題は周囲に相談しにくい悩みだけに、一人で抱え込んでしまいがちです。
そんな時は、ぜひ池袋サンシャイン美容外科にご相談ください。
監修者情報
医療法人社団 栄真会
池袋サンシャイン美容外科
院長 鈴木 栄樹
日本美容外科学会正会員・認定医
日本美容外科医師会正会員
日本抗加齢医学正会員
<院長略歴>
95年 聖マリアンナ医科大学卒業
03-06年 医療法人博済会鈴木病院 美容外科外来開設
06年 池袋サンシャイン美容外科開設